欠測値(欠損値)の定義とは?問題点は?


欠測値(欠損値)の定義とは?
欠測値(欠損値)とは、本来取得できるはずだったデータが取得されていない状態を指します。
データの解析においては、欠測値は問題となります。
欠測値の問題点
欠測値の存在により、以下のような問題が生じます。
- 本来取得できるはずだった解析結果が得られにくくなること。
- データ数が減少すること。
- 試験の信頼性が損なわれること。
欠測値は本来取得できるはずだったデータが取得されていないため、欠測値が存在するデータを解析しても、本来得られるべき解析結果を得ることが難しくなります。
また、欠測値をそのまま放置すると、データ数が減少してサンプルサイズが小さくなってしまいます。
さらに、欠測値が多すぎると試験自体の信頼性に問題が生じてしまいます。
欠測値の原因
欠測値の原因はさまざまです。
例えば、被験者が来院しなかった、データの取得忘れ、データの入力忘れなどが考えられます。
医療や研究においては人間が関与するため、ヒューマンエラーは避けられない現象です。
したがって、ある程度の欠測は許容されるものと認識されています。
欠測値のメカニズム
欠測値には以下の3つのパターンが存在します。
- 完全無視型: 欠測値が出た場合、そのデータを完全に無視する方法。
- 単純な削除型: 欠測値のあるデータを削除して解析を行う方法。
- 代理値の補完型: 欠測値を他の値で補完して解析を行う方法。
以上が欠測値(欠損値)についての説明でした。
多重補完法とは
データの欠測値を補完するための手法であり、以下の手順を踏んで行われます。
- 欠測値を代入した複数のデータを作成する
- 各データに対して分析を行う
- 分析結果を統合して最終的な補完値を得る 例えば、データセットに10個の欠測値が存在する場合を考えます(欠測値の個数は変動可)。
この場合、乱数を使ったアルゴリズムに基づいて10個のデータセットを作成します。
それぞれのデータセットに対して、目的とする分析を実施します。
10回の分析を行うことで、10個の補完結果が得られます。
最終的には、これらの結果を統合して1つの補完値を得ることができます。
多重補完法は、単一補完法に比べてより柔軟な補完方法と言えます。
なぜなら、多重補完法では単一の補完結果に頼るのではなく、複数の結果を統合することによって不確かさを考慮できるからです。
また、欠測値が発生する前後でのデータの変動や特性をより正確に再現できる可能性があります。
ただし、多重補完法には分析の手間や計算量が増えるというデメリットもあります。
また、補完した結果を解釈する際には、統合結果の不確かさに注意が必要です。
統合結果が異なる場合、それらの結果の幅を考慮して解釈する必要があります。
以上のように、多重補完法は欠測値への対処方法として有用ですが、手間や計算量、解釈の注意点を考慮しながら適切に実施する必要があります。
欠測値への対処方法:モデル解析(一般化線形混合モデル:Generalized Linear Mixed Model)
最後にご紹介する欠測値への対処方法は、モデル解析です。
この手法では、「一般化線形混合モデル」と呼ばれる手法を使用します。
特に、連続変数(量的データ)に対しては、「MMRM(Mixed Model Repeated Measure)」という解析手法がよく使われています。
具体的なアルゴリズムや詳細な解説は少し難しいため、ここでは省略させていただきます。
しかし、覚えておいていただきたいのは、この方法は欠測値を「補完」するのではなく、欠測値をノイズや誤差として取り扱わずに、モデル内に組み込んで解析するという特徴があるということです。
つまり、欠測値を単なる欠損データとして扱うのではなく、モデルに組み込むことで、より正確な推定結果を得ることができるのです。
例えば、ある研究で得られたデータには、何らかの理由で一部のデータが欠損している場合を考えてみましょう。
通常の手法では、欠損したデータを補完する必要がありますが、一般化線形混合モデルを用いると、欠損したデータを補完する必要がなくなります。
代わりに、モデル内に欠損データが存在すると仮定し、その欠損データをノイズや誤差として取り扱います。
これにより、モデル解析によって、欠損データを考慮したより正確な推定結果を得ることができるのです。
このように、一般化線形混合モデルを使用することで、欠測値を補完するのではなく、モデル内に組み込んで解析することができます。
その結果、より正確な結果を得ることができるのです。